下絵でも

僕の部屋にはフレームに入れたポストカードが並んでいます。絵画展に足を運ぶのが大好きで、観終えたあとのお土産コーナーでその日に観た中で特に印象に残った絵のポストカードを購入。そしてそれを写真用のフレーム(無印で購入)に入れて部屋に飾っています。ちょっとした趣味みたいなもので、全部でざっと50枚くらい。今ではもう飾れるスペースが尽きてしまい、買うことはできなくなってしまったのだけれど。

 

どれも自分が強い印象を受けて選んだものなので、どの一枚もずっと眺めていることができます。ただその中でも、「自分の写真もこの領域にまで高めないとな」と強く思わせてくれる作品があります。それはミュシャの『四つの星』という4枚の絵からなる連作。「宵の明星」「暁の明星」「月」「北極星」の4つの星を、女性と花に見立てて描いた装飾パネル状の作品です。(ちなみに春にあったミュシャ展は忙しくてついに行けなかった…)

 

この作品がなぜ僕の創作意欲を掻き立てるのかというと…僕の部屋に飾ってあるポストカードは、『四つの星』の下絵、つまり下書きで描いた絵のものだからです。

 

 

真の表現力を持つ人の作品は、その下書きですら人の心を動かす。そしてそこまでの表現力を会得するまでの果てしないように思える過程を想像すると、下絵ですら、とても尊い作品なのだということを感じずにはいられません。創り手がこれまでの人生で掛けてきた膨大な時間が、1つ1つの作品の、その下絵にまで込められている。作品を観る人の側にとっては関係のない話かもしれませんが、創り手の創作に掛ける情熱を想うと、むしろ下絵にこそ、僕は愛着とそして共感を覚えます。

 

写真においては、試し撮りでパパっと取りあえず撮ってみたというものが、絵画における下絵と似たような位置づけのものかなと思います。そうした下絵写真も含めて、何十枚、何百枚と撮った中での数枚だけを、自分の作品としてこれまでお届けし続けてきました。しかし、たとえ下絵写真であったとしても、誰かの心を動かすものにしなければいけない。部屋の片隅の『四つの星』の下絵を眺めていると、そう強く思わせてくれます。

 

例え下絵でも誰かの心を動かしたい。

引き続き自分の表現を問い続けます。

 

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